The Clarinetからクラリネットのためのアーティキュレーションの- Kornel Wolak

クラリネットのためのアーティキュレーションの- Kornel Wolak

本原稿はThe Clarinet Online版に掲載されたものです。ICAの許諾の下、日本語に訳しました。動画アニメーションはリンクを貼ってありますので、そちらをご参照ください。                        日本クラリネット協会 下澤達雄

今年のClarinetFest では Dr. Kornel Wolakによるアーティキュレーションの講演があった。 Wolak博士はトロント大学音声言語病理学講座の口腔内運動研究室においてA. Slis, A. Namasivayam, P. Van Lieshout 博士らとともに演奏家の口の中が演奏中どのように動いているのかを3次元電磁波(Electromagnetic Articulograph (EMA) )を用いて研究を行っている。EMAを用いることで舌、唇、あごの動きを観察することができ、さらに表面筋電図(Surface Electromyography (sEMG))を用いて顔面筋、特に唇の筋肉の動きを観察できる。さらに呼吸状態をRespitraceを用いて、胸郭、腹部を測定することで息の量、流れなどについてもデータを取っている。同時に録音をし、アンブシュアの変化、広い音域での変化を記録している。

研究の目的はクラリネットの音を作るに当たり口腔内の動き、顔面筋、息の圧力の関係を解明すること、また、発音の際のトレーニング方法を開発することにある。

最近発行された Articulation Types for Clarinet, はクラリネットの教育者のために書かれたもので、研究から得られた様々なアーティキュレーションのパターンがイラストとともに示されている。生徒たちにスタッカートなどを説明するのに役立つように口腔内の変化が解説されている。

この本には歴史的な背景や、シングル、ダブル、トリプルタンギング、や特殊なタンギング方法たとえば、synthetic speedon-the-reed multiple, や lateral tonguing;さらにはスラップタンギングやフラッターについても解説されている。ここではシングル、ダブル、ならびに ラテラル(水平)タンギングについて抜粋する。

クラリネットのアーティキュレーション

本稿では下記のように言葉を定義する。:

  • アーティキュレーション:  音を出す方法.
  • スタッカート:  アーティキュレーションの一種.
  • スタッカートの形:  どのようにスタッカートを作るか?R
  • アンブッシュア:  音を出すための口腔内すべてあるいは一部分

略号

  • TT:  Tongue Tip 舌先
  • TB:  Tongue Body 舌体部
  • TD:  Tongue Dorsum 舌根
  • ST:  Single Tonguing シングルタンギング
  • DT:  DoubleTonguing ダブルタンギング
  • TRT:  Triple Tonguing トリプルタンギング

歴史を振り返り、アーティキュレーションの進化を解説し、実験的ではあるが、有用に思える新たなスタッカート奏法について解説する。それぞれのアーティキュレーションについて図を示し、その賛否の意見を示す。まずは口腔内の解剖について図示する。

図1

歴史 

ダブルリップ

18世紀にはまだどのようにマウスピースを加えるか、一般的なやり方は決まっていなかった。というのはオーケストラに登場した当初はクラリネットはオーボエ奏者が演奏することが多く、オーボエはダブルリップ奏法を用いるからである。ダブルリップはリードを上下の唇にうまく合わせることができるアンブシュアである。.

UNTERSICHBLASEN & UBERSICHBLASEN TECHNIQUES

これはクラリネットの奏法で同時期に行われていたものである。Untersichblasenとは現在もっともよく使われているリードが下唇にあたる方法であるのに対しUbersichblasenとはリードが上唇にあたる奏法である。Untersichblasenが一般的になる前にはバロックや古典派のクラリネット奏者はUbersichblasenで演奏していた。

その理由は単純で、18世紀、19世紀のクラリネット製作者は接合部にメーカーのマークを入れていた。組み立てるとこのマークが前から見えるようにマークを入れていた。そうするとマウスピースの切り口が上に来るように作っていたからである。これらの二つのリードの扱い方はアンブッシュアに影響し、舌の位置にも影響を及ぼしていた。その結果、舌の位置は演奏者のアーティキュレーションの形、質に影響することになった。それゆえスタッカートの演奏方法も異なっていた。

UBERSICHBLASEN / 横隔膜と声門を使う

Ubersichblasenではリードと舌の接点が遠いのでスタッカートを吹くには咳き込むときあるは‘が’を発音するときのように声門を閉じて、横隔膜を使う方法がとられていた。あるいは単純に横隔膜を上下させ息を止めることでスタッカートを吹いていた。

図2

上述のように2つの演奏方法は同時期に行われていたので、2つの異なったスタッカートを使い分けていたわけで、クラリネットの音について重要な意味があった。たとえばJ. Frölichは現在ではすっかり忘れられている横隔膜を使ったスタッカートが歌を歌う時のスタッカートと最も近いがゆえに理想的な方法だと述べている。

ドイツの作曲家でクラリネット奏者でもあったF.J. Roeser Another が1764年に作曲した曲では16分音符の部分はリードが上向きで軟口蓋にくっついている状態のクラリネットでは演奏できないとしている。つまり、Ubersichblasenでは早いパッセージではアーティキュレーションが不十分であると考えていた。

スタッカートについてもっとも大きな進歩をもたらしたのはフランスの偉大なクラリネット奏者で1801年には有名な教則本もだしたJ-X. Lefevre である。彼はフランスのクラリネット流派の父であり、自身はUbersichblasenで演奏し、その奏法を進める立場にあった。

UNTERSICHBLASEN /横隔膜と声門を使う

Untersichblasenでも横隔膜と声門を使うことができるが、むしろリードと舌が直接当たる奏法が可能であり、現在ではシングルタンギングと呼ばれる奏法が用いられる。シングルタンギングが使えるUntersichblasenが一般的になるだろうことは想像に難くない。

図3

一般的なアーティキュレーション

シングルタンギング

  • もっとも一般的なタンギング方法である。
  • すべての楽器できれいなスタッカートを演奏することができる。
  • TB, TD(舌先、舌根)を使い分けて各種音程に対応することができる。
  • リードをマウスピースに接着、かい離させるタンギングなのでリードの裏側に圧力が生じてしまいスピードが遅くなる。
  • アンブシュアを調整する必要がない。
  • 演奏家の技術にもよるが、どんな速度でもどんな音程でも理論的には可能な方法である。

留意点!

  • 高音部での早いパッセージでは注意が必要である。

図4

ダブルタンギング

ダブルタンギングは舌とリード、舌と口蓋を接着させる方法である。振り子のように舌先とリードの接着と舌体が口蓋に接着させることを繰り返すもので’ てぃ  くっ/てぃ  くっ‘と発音するようにして繰り返す。

  • 速いパッセージでスタッカートを吹くのに有効である。シングルタンギングの倍の速度でできる。
  • 高音になればなるほど難しくなる。
  •  くっ のとき舌根が軟口蓋に接着するため息の流れが途切れてしまう。
  • てぃ のとき舌先がリードをマウスピースから接着、かい離させるためリードの裏側に圧力が生じてしまいスピードが遅くなる。
  • また、アンブシュアを常に調節する必要がある。
  • しっかりしたアンブシュアとテクニックが必要である。

留意点!

  • TT,TBに連続した振り子運動をさせるためTDの位置に制約ができるため高音では音色が犠牲になる。

図5

特殊なアーティキュレーション

ラテラル タンギング

ラテラル(水平) タンギング(Lateral Tonguing )とはその名前が示す通り舌を水平に動かしてリードの先の少し下の部分をなでるようにすることで音を切る奏法である。この奏法はK. Steinによって報告されたもので、どの音程でも舌の動きを制約することなく素早いタンギングができるとされている。

  • 素早いタンギングが可能である。
  • 舌の先を水平に動かすことが必須である。
  • 舌体や舌根を使って くっ の音を出すような動きをする必要がない。
  • ひとたび慣れれば高音でも難なく使える。
  • 息が途絶えることはない。
  • シングルタンギングが上手にできることが前提とならない。

留意点!

  • 舌先はリードの先端よりやや根元側を水平に動かすことが重要で、決して先端をこすってはいけない。うまくいかないと舌を切ってしまう。

図6

詳細はDr. Kornel Wolak’s のwebにて kornelwolak.com.

本研究は2017年の 7th European Clarinet Festival / ClarMeet Porto にて発表予定。